【話題】<公共スポーツ施設は約5万3000カ所>日本版NBA施設は実現する?安倍首相は25年までに全国20カ所で整備するよう指示

スタジアムやアリーナなどのスポーツ施設を収益があげられる施設に変え、地域振興の拠点にしようという動きが加速し始めた。
安倍晋三首相は3月24日の未来投資会議で、地域振興の拠点機能を持たせたスポーツ施設を2025年までに全国20カ所で整備するよう指示。

モデルとして念頭に置くのは、年間1億ドル(108億円)以上を稼ぐ米プロバスケットボール(NBA)の施設などだ。
ただ、住民の年齢構成などによって地域の需要は異なるだけに、緻密な戦略で臨まなければ稼ぐこともままならず、無駄なハコモノが積み上がる結果になりかねない。

「多様な世代が集う、地域の交流拠点に生まれ変わらせる」。安倍首相は未来投資会議で地域のスポーツ施設についてこう述べ、法律、予算、税制などの政策を総動員する考えを示した。
整備する20カ所は公募で選び、専門家を自治体に派遣してアドバイスする。

日本のスポーツ施設は、大半が地方自治体の所有で、赤字の垂れ流し体質が批判されてきた。

文部科学省によると、公共スポーツ施設は約5万3000カ所に達し、民間施設(約1万7000カ所)の3倍に上る。日本政策投資銀行などの13年の調査によると、
サッカーなどの主要リーグの試合が行われたスタジアムやアリーナなど593施設のうち、民間所有はわずか4%の24施設にとどまった。
残りは市区町村が414施設、都道府県が141施設、独立行政法人が7施設、その他が7施設で、こうした構成は、今も変わっていない。

公共施設の大半で収益が上げられないのは、週末に集中するスポーツイベントへの「場所貸し」くらいにしか知恵が回らず、
平日の稼働率が低いからだ。また、大型施設は郊外に作られるケースが多いことも、収益性を下押しする原因となっている。

安倍首相の指示には、こうした赤字体質を改め、稼ぐ力を持つ「プロフィット(収益)センター」に生まれ変わらせる狙いがある。
政府は昨年6月まとめた成長戦略で「スポーツの成長産業化」を柱に据えており、首相の指示は、これに沿ったものだ。

政府が目指す形の一つとするのが、米国や欧州のプロスポーツチームが使うスタジアム、アリーナだ。

その一つ、米ロサンゼルス市の「ステイプルズ・センター」は、NBAのロサンゼルス・レイカーズなど複数のプロチームの本拠地。
1999年にオープン後、スポーツ、コンサートなど年間250のイベントが行われ、400万人が訪問している。
毎年2月には米音楽最高の栄誉とされるグラミー賞の授賞式が行われるほか、かつて民主党の全国大会が開かれたこともある。

注目すべきはその「稼ぐ力」だ。スポーツ庁などによると、年間収入は、命名権5800万ドル
▽広告掲載契約の収入2500万ドル▽施設内のレストラン営業権契約収入1200万ドル▽プレミアム席収入3300万ドル-などとなっている。

規模こそ及ばないものの、日本でも成功例は出始めている。3月の未来投資会議では、プロバスケットボール「Bリーグ」の大河正明チェアマンが、
クリニックやフィットネスジム、レストランを併設した「カシマスタジアム」(茨城県鹿嶋市)、屋根付きの市民交流スペース、市役所などの行政サービスを併設したアリーナ「アオーレ長岡」(新潟県長岡市)を紹介。

それぞれ年間数十万~100万人規模に上る集客を達成していると説明した。

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産経新聞 4/21(金) 10:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170420-00000515-san-bus_all